新型出生前診断とは
みなさんは新型出生前診断という言葉を聞いたことがありますか?晩婚化による出産の高齢化に伴って、ダウン症など染色体異常のリスクが高まっていることから受けられるようになりました。
新型出生前診断とは、正確には無侵襲的出生前医学的検査と言い、英語のnon-invasive prenatal testingの頭文字をとってNIPTと言われることもあります。
胎児が順調に発育しているかなどの経過を確認するということですが、特徴は染色体異常の可能性が調べられるという点とされています。
染色体とは遺伝子であるDNAが巻きついたもので、細胞の核の中に存在します。この染色体には常染色体と性染色体があり、常染色体は22対、性染色体は1対の計23対です。
常染色体には1~22までの番号がついており、このうち13番目、18番目、21番目の染色体の異常の可能性を発見することができるとされています。
これまでの検査としては羊水検査や絨毛検査などが行われていました。お腹に針を刺して羊水もしくは絨毛を採取する方法です。
これらは検査の方法としては確立されていますが、母体や胎児を傷つけてしまう恐れもあり、最悪の場合は流産につながってしまうリスクがあります。
新型出生前診断では、血液をおよそ20cc採取するだけなのでこれらのリスクや母体の負担はかなり軽減されるということです。
また、これまでの採血による検査よりも診断精度は格段に高くなっているとされています。
染色体の異常をどれだけ発見できるかを示す陽性的中率は80~90%、染色体の異常がないと否定できる陰性的中率は99%という数値です。つまり新型出生前診断を受けて陰性と判定された場合には、ほぼダウン症などの染色体異常の可能性はないということです。
そんな新型出生前診断の流れや条件についてみていきましょう。
新型出生前診断の流れ
新型出生前診断は、希望すれば誰でも受けることが可能という検査ではありません。検査内容自体は血液検査のみと簡便なことから、検査だけでなく結果やその後に関する説明が充分に行われることなく実施されるという懸念があるためです。
つまり、染色体の異常があるかないかが簡単にわかるということだけが先走りしてしまい、簡単に検査を受けて異常があれば簡単に中絶するという帰結になってしまうことが懸念されているということですね。
そのような点を踏まえて、新型出生前診断は一般的な妊婦検診とは異なりリスクの高い妊婦さんを対象にした臨床研究という形で行われています。正確にはNIPTコンソーシアムという新型出生前診断を一定の基準に基づいて実施している病院の共同研究組織が実施する、「無侵襲的出生前遺伝学的検査である母体血中cell-free DNA胎児染色体検査の遺伝カウンセリングに関する研究」となっています。
検査を希望する場合にはこの臨床研究に参加するということになります。複数回のアンケートに回答したり、血液自体はアメリカで検査されることが特異点です。
検査の流れとしては、まずは新型出生前診断を受け付けている医療期間を受診します。そこで、臨床研究への参加資格の確認が行われるということです。
参加資格とは、上述したように染色体の異常のリスクが高い妊婦さんで下記の通りです。
・分娩予定日に35歳異常の高齢出産の場合
・染色体異常児を出産もしくは妊娠したことがある場合
・他の検査で胎児に染色体異常のある可能性が指摘された場合
これらの条件を満たすことが確認された場合に検査へと進むことができます。
検査の前には、検査自体の説明や臨床研究についての説明、遺伝についてのカウンセリング、そして同意できるかどうかの確認が行われます。そして検査を行い、結果の告知や説明、そして必要があれば改めて遺伝についてのカウンセリングが行われます。結果がわかるには2週間ほど必要とされています。
ここで陽性の場合や判定が保留となった場合には上述の羊水検査もしくは絨毛検査のような侵襲的な検査が行われるということです。判定保留の場合には採血をもう一度行う場合もあるとされています。
臨床研究ということもありますが、新型出生前診断としての血液検査だけでは確定診断には至らないということです。確定診断のためには羊水検査もしくは絨毛検査で陽性となることが挙げられています。
また臨床研究への参加資格を挙げましたが、既に異常が明らかな場合にはやはり対象とならないとされています。超音波検査などで異常が明らかになっており、何らかの染色体異常があるとわかっている場合には羊水検査や絨毛検査が行われるということです。両親が染色体異常の保因者であることがわかっている場合にも、最初から羊水検査や絨毛検査を行うようです。
もう1点、35歳未満の場合は上記に挙げた3つの染色体異常の罹患率が低いことや、診断精度の問題もありこの年齢制限になっているとされています。
新型出生前診断でわかる疾患の病態
新型出生前診断では、染色体の異常が調べられると述べました。染色体の異常と言っても多岐にわたりますが、その中でもトリソミーという異常を調べることができるとされています。上述した13番目、18番目、21番目の染色体のトリソミーです。
染色体は対になっていると述べましたが、トリソミーとは1本多い状態で染色体が3本あるということを指します。少ないと異常が起こることはイメージしやすいですが、余分にあっても異常が起こるということですね。
このトリソミーが起こる中で疾患として確立されているのが13番目、18番目、21番目のトリソミーということです。
13番目にトリソミーが起こることをパトー症候群と言い、発達の遅れを重度に呈するとされています。中枢神経系や消化器系、循環器系、泌尿器系などの合併症を伴い、身体のほとんどの機能が障害されるようです。5000~12000人に1人の割合でみられるとされています。
18番目にトリソミーが起こることをエドワーズ症候群と言い、身体面での成長が遅れたり機能不全を伴うとされています。心臓や血管系の合併症、呼吸器系の合併症も伴うようです。女の子に多いとされ、男児の3倍とされています。パトー症候群よりは頻度が上がり、3500~8500人に1人とされているようです。
21番目にトリソミーが起こることをダウン症候群と言います。ダウン症はご存知の方も多いと思いますが、精神の発達の遅れや特徴的な顔貌を呈します。ダウン症は染色体異常の中で最も多く、600~800人に1人の割合でみられるとされています。ダウン症と染色体異常のイメージは強いことから、新型出生前診断はダウン症かどうかを調べる検査と思っている人もいるのではないでしょうか。
新型出生前診断の費用について
新型出生前診断は、他の妊婦検診と同様に健康保険は適用されません。自由診療となるため費用は高額になります。
受診する病院によっても多少の違いはあるようですが、基本的には20万円前後が全額自己負担になります。
これは検査前の診察や結果が説明されるときの診察も含まれています。
もし陽性もしくは判定保留となって再検査や羊水検査などを受ける場合にはさらに必要ということです。一般的な妊婦検診の倍以上なので、経済的な負担はとても大きいと言えるでしょう。
もちろん病院が遠い場合には交通費の負担も大きくなるため、この点では安易に受けることへの歯止めとなるとも言えます。
臨床研究ということをよく理解しておくこと
新型出生前診断について、そのしくみや明らかにできる疾患をみてきました。新型出生前診断は臨床研究ということをよく理解し、希望する際には説明をきちんと受けることが大切です。