新天地を求めての移住、老後の第二の人生など、日本を飛び出して海外生活をする人たちに人気の移住先のひとつにタイがあります。
タイは物価が安く、東南アジアの中では最も治安が良いため、暮らしやすいと評判です。
寒くならない気候や、地震がないという点、親日的なお国柄などもロングステイには好ポイント。
さて、ロングステイをしたい場合、どんな手続きや準備が必要なのでしょうか。
これからタイでのロングステイを検討したいという人のために、その方法や注意点をご紹介しましょう。
さっと読める目次
長期滞在に必要なビザ(ビジネスビザ、リタイアメントビザ、就学ビザ)
日本人がタイへ入国する際に必要なものはパスポートのみです。
正確には出入国カードと帰りのチケットも必要ですが、出入国カードは空港に着いてから書くことができますし、帰りのチケットの提示を求められることはほとんどありません。
日本人はビザがなくても30日間タイに滞在することができます。
30日を超えて滞在したい場合は、ビザを取得するか、いったん出国して再入国するしかありません。
取得が最も簡単なビザは観光ビザです。
観光ビザでは60日の滞在が可能で、さらに30日の延長が認められています。
観光ビザをタイ国内で取得することはできません。
日本で取得してから行くか、ラオス、カンボジア、ベトナムなどタイ周辺の国へ出て、その国のタイ大使館で取得することになります。
また、2015年から「マルチプル」というタイプの観光ビザが導入されました。
これだと6か月間の有効期間の間に通算60日間滞在が可能で、さらに30日間延長できます。
日本のタイ大使館・領事館で取得できます。
ただし、観光ビザではタイで仕事をすることができません。
また、取得の回数も限られており、2回が限度とされるケースもあれば、3回取れたというケースもあります。
実際には観光ビザで不法に就労し、何年もタイに滞在している人もいますが、観光ビザをもらい続けるために大変な努力を強いられています。
このため、タイにロングステイするためには、長期滞在できるビザを取得することが大切です。
タイでのロングステイには、仕事での滞在、留学など学校へ通うための滞在、タイ人と結婚しての滞在、老後を過ごすための滞在などのケースがあり、それぞれで取得できるビザが違います。
このうち、仕事での滞在、つまりタイにある会社の駐在員やその家族としての滞在の場合、ふつう会社がすべての手続きを行ってくれます。
本人や家族が煩わしい思いをすることはありません。
留学の場合も、学校が丁寧にサポートしてくれるので、心配はありません。
続いてはタイ人と結婚して滞在するケースです。
この場合、日本人が男性なのか女性なのかでビザ取得の条件が異なります。
日本人男性がタイ人女性と結婚してビザを申請する場合、ノン・イミグラントのカテゴリーO(Other)のビザを取得できます。
そのために必要な書類等は以下の通りです。
- 40万バーツ(約120万円)以上をタイの自分名義の銀行口座に2か月間以上(更新の場合は3か月間以上)預金していたことの証明書またはタイ国内で毎月4万バーツ以上の収入を直近の3か月以上得ていることの証明書
- 婚姻証明書または婚姻登録証明書
- タイ人配偶者の住所登録書
- タイ人配偶者のIDカード
- 居住地の地図と賃貸契約書
- 居住地の写真(配偶者と一緒に写ったもの)
- パスポート
- 写真2枚
日本人が女性で、タイ人男性と結婚している場合は、1番の所持金・収入証明が不要です。
タイにはまだまだ「男が稼ぐもの」という社会通念が残っているということでしょう。
40万バーツの預金や、月4万バーツ以上の収入は、タイ人にとってはかなり厳しい金額です。
タイ人女性と結婚した日本人男性と、日本人女性と結婚したタイ人男性の間にこれだけの条件の格差があるのは理不尽な気もしますが、ルールには従うしかありません。
こうして婚姻ビザを取得すれば、1年間の滞在許可が与えられ、就労も可能になります。
(正確には90日間の滞在許可、その後延長申請で合計1年間の滞在許可です。
)
満50歳以上の日本人は、リタイアメントビザを取得することができます。
条件は、80万バーツ(約240万円)以上をタイの自分名義の銀行口座に2か月以上預金していること、または毎月の年金額が65,000バーツ(約195,000円)以上ある人です。
リタイアメントビザを取得すると、1年間のタイ滞在が許可されます。
また、2016年11月からは、300万バーツ(約900万円)以上を1年以上預金していれば、5年間有効のビザを取得でき、さらに5年間の延長が可能になりました。
リタイアメントビザでの就労はできません。
ビザの取得は自分自身でも可能ですが、煩雑な手続きが苦手という人は、ビザ取得代行業者に有料で頼むことができます。
代行業者はネット検索やバンコクのフリーコピーの広告などで簡単に見つけることができます。
どこに住む?
住まいの探し方
どこに住むのかは、長期滞在の目的次第です。
ビジネスビザや就学ビザなら、会社・学校への通勤・通学が便利な場所に越したことはありません。
婚姻ビザの場合も、自分自身や配偶者の通勤を考慮しなければなりません。
バンコクでは、BTS(スカイトレイン)やMRT(地下鉄)、エアポートライナーが通勤・通学の強い味方です。
これらの線の駅近くは大変便利です。
とくにBTSのアソーク、プロンポン、トンロー一帯にはたくさんの日本人が住んでいます。
ただ、便利な場所は当然、不動産の販売価格・賃貸価格が高くなってしまいます。
価格を抑えたければ、駅からちょっとだけバスを利用するという手も検討すべきでしょう。
とくに、たくさんのバス路線が通っている地区は便利です。
バスルートはインターネットでも検索できますし、日本語のバスマップも販売されています。
長期滞在するのならバスの利用にも慣れておいた方が何かと便利です。
タイにはバンコク以外にも、日本人が多く住んでいる場所があります。
ビジネスではチョンブリ県、とくにシラチャにはたくさんの日本人が住んでいて、日本人相手の和食店やカラオケ店などが集中しています。
日本人限定のコンドミニアムも少なくありません。
また、仕事をしないリタイアメントビザ取得者は、北部のチェンマイにも多く住んでいます。
チェンマイは気候がバンコクよりも涼しく過ごしやすいのがメリットです。
日本人コミュニティーがつくられていて、ミニコミ誌が発行されたり、グループ活動が行われたりしています。
ビーチリゾートのクラビやプーケットも日本人が比較的多く住む地域です。
タイ人の配偶者がいる場合は心配ありませんが、そうでない場合、自分で不動産を探すのは大変なことです。
タイには日本系の不動産店がたくさんあり、日本語で相談できます。
インターネットでも、バンコクなどのフリーコピーでも多くの不動産店を見つけることができます。
日本とはこんなに違う、暮らしのルールと習慣
「郷に入らば郷に従え」といいます。
タイで暮らすには、タイのルールやしきたりを知っていなければなりません。
まず第一にアドバイスしたいのは、王室に対する尊敬です。
日本での皇室と、タイでの王室は同じではありません。
ラーマ9世王が崩御した現在、国民のほとんどが心から悲しみ、喪に服しています。
今後は新国王が国民の新しい心の支柱になっていくでしょう。
タイにはいまも不敬罪があります。
王室に対して失礼な態度・言動を行った場合、不敬罪に問われ、3年から15年の禁固刑に処せられることがあります。
そうならないまでも、タイ人の前で王室をけなすことはトラブルの原因になるので慎まなければなりません。
また、仏教に対する敬虔な姿勢も求められます。
仏教徒でない人でも、寺院や僧侶、戒律を汚すような行為は厳禁です。
仏教の重要な記念日・祭礼日にはアルコール類の販売が禁じられています。
お酒を買うことはできませんし、ストックしてあっても公衆の面前での飲酒は避けた方が無難です。
最低月いくらあれば暮らせる?
タイの物価は、体感で日本の3分の1から4分の1程度です。
普通のタイ人の食費は、1日当たり150バーツ(約450円)から200バーツ(約600円)程度です。
これに住居費、光熱費、交通費、被服費などが加わって必要な金額が算定されます。
この中で、住居費はピンからキリまでということになるので、これを外して考えれば、月に10,000バーツ(3万円)から15,000バーツ(約45,000円)あれば十分暮らしていくことができます。
ただし、これは贅沢をせず、タイ人と同じような生活水準をすればの話です。
実際のところ、タイ人には2万バーツ(約60,000円)に満たない月給で暮らし、預貯金もしている人が大勢います。
もちろん、多くの旅行者のように毎食良いレストランで食べたり、贅沢品を購入するようであればこの限りではありません。
タイロングステイ条件のまとめ
タイは日本人にとって暮らしやすく安らげる国です。
縁あってタイ人と一緒に暮らすことになる人はもちろん、海外で何かをしたいという人にも、また老後をのんびり楽しく暮らしたいという人にもお勧めできます。
しっかり準備をして、スムーズなタイライフのスタートを切ってください。